あらすじ

「あんたたちは、泥の中を這うスッポンや」 昭和三十年、秋。広島。戦争の焼け跡がまだ残る漁村で、三人はそう呼ばれていた。 目が見えない勇。 耳が聞こえない幸子。 言葉を持たない老犬、ポチ。 勇は指先で幸子の手のひらに文字を書く。幸子は震動で危険を知らせる。ポチは体温でそっと寄り添う。誰も欠けた部分を口にしないまま、三人は互いを支え合って生きてきた。 だが、ある新月の夜。 海が、音もなく銀色に発光した。光は三人を包み込み、気づけばそこは、色彩と音に満ちた不思議な場所だった。 「見える……。幸子、お前の顔が、見えるぞ!」 「音が……勇さんの声が、聞こえる……!」 生まれて初めて、三人は「完璧な体」を手に入れる。 だがその歓喜の裏で、これまで誰にも明かせずにいた「醜い過去」が、静かな湖面に一つずつ映し出されていく――。 このまま、完璧な世界にとどまるか。 それとも、不完全な自分を抱えたまま、泥の中の日常へ戻るか。 欠けていることは、本当に不幸なのだろうか。 たった一夜だけ与えられた奇跡の果てに、三人が選んだ答えとは。 指先だけで交わす愛と、静かな覚悟の物語。全7話・完結済み。

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小説を読もう2026/07/17
  • 現在の作品目が見えない僕と、耳が聞こえない君と、言葉を持たない犬が、一夜だけ完璧になった話