あらすじ
現代日本で薬学研究に没頭していた研究者・水瀬は、実験中の事故であっけなく命を落とす。次に目を開けたとき、彼女の意識は、婚約者の王太子から満座の中「毒殺未遂の犯人」として断罪されている最中の伯爵令嬢ヴィオラ・アシュフォードに重なっていた。
婚約破棄も追放も、ヴィオラにとっては望むところだった。なぜなら、自分が盛ったとされる「毒」は、化学的にあり得ない代物だったからだ。真犯人の存在を確信しながらもあえて弁明せず、彼女は場末に小さな工房を構える。前世の知識を武器に、色褪せない香水や万能薬と評判の塗り薬を生み出し、名もなき町娘たちの間で静かに支持を広げていく。
だが平穏は長く続かない。今度は宮廷で新たな毒殺未遂事件が発生し、被害者はよりによって元婚約者の王太子その人。事件を追う近衛副団長ノア・ヴァンレイは、唯一毒の正体を見抜いたヴィオラの工房に辿り着き、彼女こそが「本物」だと気づいてしまう。
集めた証拠と論理だけを武器に、ヴィオラはかつて自分が断罪された、まさにその舞台で真犯人を名指しする。彼女を見捨てた者たちが自らの過ちに震える中、ただ一人最初から彼女の価値を見抜いていたノアだけが、静かに手を差し伸べる——。