あらすじ
「忘却と寂然の地」——西ヤルアラム。
マナは霧散し、神々は去った。ここでは魔法は学問というよりも、隠され、恐れられる奥義である。人々は己の肉体と技、そして共同体の知恵だけを頼りに、数千年を生きてきた。
だが四百年前、一粒の豆がすべてを変えた。畑が草原を食い、都市が生まれ、鍬を捨てた者は「冒険者」と呼ばれるようになった。
貝紫を纏う海峡の元老。黒土に境界石を打ち込む入植者。霧の森で品を置いて立ち去る狩人。塩と金と琥珀の道を行く隊商。忘れられた掟を守るオーク。そして、地の底で目覚めを待つ神。
誰かの豊かさは、必ず誰かの狩場の上に築かれる。
変わりゆく大地に生きる、名もなき者たちの記録。