あらすじ
フロストヴェイル王国には春がない。
長い冬に閉ざされた王宮で働く新人メイド・ミネットは、魔力をほとんど持たない『空白体質』の落ちこぼれ。
魔法が当たり前の王宮では役立たず扱いされていた彼女だったが、ある日、誰も近付きたがらない《絶対零度の女王》エルゼリカの専属メイドを命じられてしまう。
女王の私室は、紅茶も、窓も、手袋も凍りつく極寒の部屋。
近付いた使用人は次々と倒れ、王宮中が女王を恐れていた。
けれど、ミネットは冷たく美しい女王を見て思ってしまう。
――この方は怖いだけじゃない。とても寂しそうな人だ。
凍らない紅茶を淹れる。
手袋を温める。
髪を梳く。
窓を磨き、少しだけ光を入れる。
魔法も使えない新人メイドの小さな仕事が、誰にも触れられなかった女王の心を少しずつ溶かしていく。
やがてミネットは知る。
王国を覆う冬と女王の孤独には、隠された真実があることを。
これは、押しつけられた専属メイドが自分の意志で女王の隣に立つまでの物語。
そして、怪物と呼ばれた女王がたった一人の〝春〟を見つける物語。