あらすじ
王太子カシアンとの婚約解消が、「円満な別れ」として華々しく発表された。
長年の婚約者であるアウレリアも式典に出席し、王太子とその恋人ネリネを祝福したという。さらに、婚約解消に伴う補償まで自ら辞退したことになっていた。
だが、その夜、アウレリアは王都から遠く離れた侯爵領で、病に倒れた祖母に付き添っていた。
婚約に未練はない。王太子が別の女性を愛しているのなら、解消にも応じるつもりだった。
それでも――言っていない言葉を、言ったことにはさせない。
父の協力を得て正式な異議を申し立てたアウレリアは、国王府の実務官ユベールとともに、式典の入館記録、閉ざされた控室、偽造された声明を調べていく。
一方、王太子の恋人ネリネもまた、アウレリアが書いたとされる偽の手紙を渡され、自分に都合のよい言葉を用意されていたことを知る。
やがて開かれた王宮査問委員会。
自分は皆の名誉を守ったのだと言い張る王太子に、アウレリアは静かに告げる。
「その『円満な婚約解消』に、私は出席しておりません」
これは、婚約者を取り戻す物語ではない。
奪われた自分の言葉と人生を、自らの手に取り戻す侯爵令嬢の逆転劇。