あらすじ
「アウレリア・ローゼンベルク! 君との婚約を破棄する!」
卒業記念祝賀会で王太子から告げられた、突然の婚約破棄。
けれど、公爵令嬢アウレリアが気にしたのは、失恋でも悪女の噂でもなかった。
「承知しました。ただし、卒論提出まであと三日ですので、続きは後日にしてください」
彼女は社交界で「温室の悪女」と恐れられる、魔法植物学の研究者。
研究対象は、弱った土地へ魔力をゆっくり戻す可能性を持つ、地味な月眠り苔だった。
ところが温室は封鎖され、実験鉢は消失。徹夜で論文を提出した末に得たのは、条件付き合格と辺境の村ミューレ行きだった。
壊れた温室、動かない水車、痩せた畑。そして、研究者を信用しない住民たち。
さらに、聞いた秘密を勝手に歌うキノコまで現れて――。
仮説を立て、観察し、失敗し、もう一度確かめる。
学問は万能の魔法ではない。
それでも、明日を少しだけよくすることはできる。
悪役令嬢と呼ばれた不器用な研究者が、農民、職人、助手、聖女とともに、寂れた村と自分の人生を育て直す物語。