あらすじ

「泣くのか。契約に、涙の項目はないぞ」 と夫のヴェインに言われた婚礼の夜から、わたしは二年、白い結婚耐えてきた。 三年間一度も床を共にしなければ、婚姻は無効にできる。 あと一年だけ黙って待ち、誰にも知られずに終わらせるつもりだった。 けれど、両親から預かった五歳の妹フィーが、子供たちの結婚ごっこで夫の声を出した。 「食事は別にする。給仕にもそう伝えておけ」 「泣くのか。契約に、涙の項目はないぞ」 どちらも、誰にも話していない婚礼の夜の言葉だった。 フィーには、物に残った言葉を声色ごと拾ってしまう、不思議な力がある。 わたしが夫の言葉を否定しなかった途端、ヴェインは妹を屋敷から追い出し、こう命じた。 「東棟へは絶対に入れるな」 ――あの人は、何を隠しているのだろう。 夫が燃やそうとした書類。 二年前に消えた花婿人形。 妻を黙らせ、家名だけを利用するために残された言葉。 フィーが触れるたび、大人たちが隠していた声が、次々と屋敷へ戻ってくる。 五歳の妹が無邪気に拾う言葉によって、白い結婚の夫が自分の口で破滅していく物語。

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小説を読もう2026/07/16
  • 現在の作品五歳児、夫の秘密を本人の声で全部しゃべる――「契約に涙の項目はない」誰にも話していない初夜の言葉でした