あらすじ
父王と王太子が放り出した政務を一人で背負い、二日で四十分しか眠っていなかった第三王女ティセラ。
深夜三時、窓を割って現れた伝説の暗殺者ハルヴェンが差し出したのは、刃ではなく一枚の退職届だった。
「姫、退職代行です」
ティセラが自ら署名すると、ハルヴェンは彼女を上質な絹張りの麻袋へ詰め、隣国グレンツ帝国へ連れ出してしまう。
そこで待っていたのは、一日八時間の勤務、温かな食事、十分な睡眠、そして彼女の働きを誰よりも正確に見ていたハルヴェンだった。
彼が大切にするのは、有能な王女として働くティセラだけではない。市場で菓子を食べて笑い、休日の朝に寝坊する彼女も同じだった。
一方、便利な実務担当者を失った祖国では政務が止まり、父王と王太子の隠してきた不正が次々と綻び始める。
国に食い潰されかけた王女が、自分を縛っていた仕事を手放し、自分の人生を選び直す退職と転職の物語。