あらすじ
※夏休み短篇小説大賞2025参加作品です
テーマ:③10年前の夏
昭和二十六(1951年)、元海軍主計係の野上晴は東京の東洋書房で編集の仕事をしていた。
噎せるような夏の熱気の中、彼は休憩中冷や水を飲んだ瞬間、十年前の悪夢のような戦艦でのめしたきの毎日と、戦友について思い出していた。
昭和十六年、十九歳の志願兵だった野上は兵科ではなく烹炊所に配置され、そこでは理不尽な旧兵の指導リンチが続いていた。
野上は烹炊所から逃れるため、経理学校の入学を決意する。
そこに、要領は悪いが優しい心の持ち主の戦友・サカグチが彼の勉強を支えてくれた。
そんな中、サカグチは恋人へ手紙を綴っていた。買い出しの鴨川に寄港中に『検閲を逃れるよう、陸に上がり投函してくれ』と野上に手紙を託すのだが…