あらすじ
「――お前のような凡庸な聖女は、もう必要ない」
大聖堂で、王太子ロベルトから突然の国外追放を告げられた召喚聖女ミナ。「本物の聖女」セレネの登場により、地味で役立たずと切り捨てられたのだ。
だが、ミナは眉ひとつ動かさなかった。
なぜなら三日前、世界樹の根に触れたとき、彼女はこの光景をすでに《視て》いたのだから。
前世は残業続きで過労死した元社畜システムエンジニア。彼女に与えられたギフト《解析》の正体は――『世界のシステムコードを読む力』。半年間、無給無休で聖水の効率を三倍にし、腐った帳簿を直し、瘴気被害を激減させてきた。そのすべては、彼女の名義に紐づいていた。
「――権限、剥奪」
パチン、と。誰にも気づかれない音で、この国の心臓部が切り離される。自分たちが何を失ったのかも知らぬ愚か者たちを背に、ミナは静かに国を去った。
「沈む船からは、早めに降りるのが社会人の鉄則ですので」
これは、泣きも喚きもしない元社畜聖女が贈る、静かで痛快な「ざまぁ」の物語。そして――世界樹の管理者《ユグ》がまだ視せていない、もう一つの神託とは?
長い夜に、なりそうだから。コーヒーを、もう一杯。