あらすじ
「私は……強い女性に――SMの、女王様になりたいんですっ!」
主人公――黒川《くろかわ》凛音《りおん》は、学校で一番美人で清楚なお嬢様、真白《ましろ》妃奈《ひな》が女王様の衣装を買おうとする姿を偶然目撃してしまう。
いい子を卒業したい。親の言いなりになってばかりの自分は嫌だ。だから女王様みたいに強くなりたい。
そう願う妃奈は、やらしてみれば罵倒ひとつロクにできない超初心者だった。
「遅刻寸前じゃないですか。黒川君のノロマ亀さん、すっぽんぽんにして校庭走らせちゃいますよ!」
「教室で罵倒の練習するな」
ぽんこつな妃奈の趣味がバレないよう、凛音は演技の経験を生かして、妃奈を一人前の女王様に育てようと決意する。
「……ふふ。私、女王様に向いてるのかもしれないですね、わんちゃんを可愛がるのが、こんなに楽しいだなんて」
へっぽこな罵倒をされ、優しく遠慮気味に踏まれ、いつしか凛音は妃奈の前でだけ、抑えられない何かを感じるようになっていく。
子供の頃から演技を強要され続け、自分の感情が本物か偽物かも分からなかった凛音にとって、それは唯一の――歪んでいたとしても、確かな手応えだった。
強くなるために女王様になりたい、優しくて無垢なお嬢様、妃奈。
本当の自分を知るきっかけになると信じ、妃奈のわんちゃんになった、凛音。
虚像と偽物。ふたりの関わりが、本当の自分への一歩となる。
「私は自分の足で歩きたい。お飾りの人形のままは……いやなんです」
親の期待、周りの視線。自分を縛るすべてに、妃奈は小さな反旗を翻す。
どこまでもまっすぐで、だけど歪な純愛と再生のラブコメディ。