あらすじ

金曜の飲み会で、新人の田辺をからかう笑いに、俺も乗った。大したことじゃない。これくらい、みんなやっていることだ。 責められそうになると、頭の中で、ある声がする。「大丈夫。ぼくちゃんは、何も悪いことはしていない」――誰に教わったわけでもない、子供の頃からの癖だ。 小学校、中学校、高校、大学。数えきれない”小さな悪意”の記憶を、俺はそうやって、その都度、飼い慣らしてきたはずだった。 だが最近、駅のホームで、奇妙なものを見るようになった。窓に映る自分の後ろに、輪郭だけの誰かが立っている。よく見ると、その輪郭の中には、いくつもの顔が透けて重なっていて――。 三十歳、独身、平凡な会社員。誰も裁かれず、誰も救われない。これは、“普通の人間”が積み重ねてきた罪の記録である。

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カクヨム
カクヨム2026/07/16
  • 現在の作品大丈夫、ぼくちゃんは何もしていない