あらすじ

彼女に捨てられた次の日、僕は小さな卵を吐いた。 口の中はまだ昨夜の胃液で酸っぱくて、喉には硬いものが擦れた感触が残っていた。気持ち悪いはずなのに、胃液の中で白く光るそれを見た瞬間、僕にはわかった。 これは、僕と彼女の子どもだ。 だって、そうでなければ困る。 これがただの異物なら、僕は彼女に捨てられ、ひとりで泣き叫び、何も食べていない胃から気持ち悪いものを吐いただけの男になってしまう。 だから僕は卵を洗って、柔らかな布へ寝かせて、毎日話しかけた。 君は僕を捨てないよね。 僕のことを材料にしないよね。 僕がいないと生きられないよね。 卵は日に日に大きくなり、僕は日に日に小さくなった。食べ物は全部吐いた。水も戻した。部屋には酸っぱい臭いが染みついた。それでも、僕の身体が減ったぶんだけ君が育っているのだと思えば、嬉しかった。 どんな形でも愛すから。 そう約束した。 本当に、約束したんだ。

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カクヨム
カクヨム2026/07/15
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