あらすじ
「──お前との婚約は破棄する。呪われた聖女など、霧の祭壇にでも捨て置けばいい」
夜会の大広間で、王太子ジェラルドは高らかに宣言した。男爵令嬢ミリアの嘘の証言によって、聖女セレスティアは神器窃盗の濡れ衣を着せられ、歴代の管理人が一年以内に発狂または失踪する「呪いの左遷先」――霧の祭壇へと追放される。
だが、彼女は動じない。前世は現代日本で看取り一筋を貫いたベテラン看護師・佐倉澪。理不尽な死とクレーマー遺族をさばき続けた彼女にとって、この程度の断罪劇では涙ひとつ出はしない。
そして何より――彼女は死者と喋れる。だからミリアが本物の泥棒であることも、すべてお見通し。
「盗まれた神器、いずれきっと見つかりますわ。案外、近くにあるものですのよ」
霧の祭壇に押し寄せる数百の死者の声。普通の人間なら三日で参るその環境も、看護師だった彼女には天職だった。パニックの現場でこそトリアージ。未練の重い順に列を作らせ、一人ずつ丁寧に「未練」を聞き届けていく。
魔物の巣の位置、隠された財宝、戦場の真実、消えた遺言――死者が語るのは、生者が喉から手が出るほど欲しがる情報の宝の山。
死者は、嘘をつけない。ならば、彼女を陥れた者たちの秘密も、全部バラしてしまいましょう。
看取りの聖女が紡ぐ、痛快・逆転の第二の人生。霧の祭壇へ、ようこそ。