あらすじ
「この箱を買えば、あなたは幸せになります」
そう言って、私は空っぽの木箱を売っている。
私は商人だ。
ただし、売っているのは商品ではない。
売っているのは――幸せという言葉だ。
中身のない箱。
ありふれた見た目。
それでも人は、そこに自分だけの意味を見つけ、価値を与える。
そんな商売を続けていたある日、一人の冒険者風の男が店を訪れる。
「幸せって何?」
「本当に今より幸せになれるの?」
次々と問いを投げかける男に、私は言葉で答え続ける。
だが、最後に待っていたのは予想外の結末だった。
男は箱を買わなかった。
金がなかったからではない。
彼は気づいてしまったのだ。
幸せを探すことが、今ある幸せを見失う理由になることを。
空っぽの箱を巡る、商人と冒険者の小さな問答。
これは、幸せとは何かを問いかける物語。