あらすじ
親からの過干渉と、押しつけられる「男の子らしさ」――。
傷つき、涙を許されない日々のなかで、少年・北崎空(きたざき そら)が身につけたのは、他人に合わせて自分を変える「仮面」だった。
いつしか心の奥に、女の子としてのもう一人の自分「志織(しおり)」を創り出した空は、本当の自分を見失ったまま、学校という名の牢獄で息を潜めて生きている。
高校二年生の春。空の隣の席になったのは、学園のアイドル“織姫”こと西原みなみだった。
誰もが彼女を眩しい記号として見るなか、みなみだけは空の仮面の奥に潜む痛みに気づき、そっと語りかける。
「心が泣いているから、わかるよ」
唯一「志織」として深呼吸できる屋上で、初めて明かされる空の孤独と、本当に求めていた“探し物”。
そんな彼に、みなみは涙をこぼしながら「生きていてくれてありがとう」と、その存在を丸ごと抱きしめる。
しかし、世界は優しくない。やがて心身の限界を迎えて教室で倒れてしまう空。
そのとき、みなみは“織姫”の仮面を脱ぎ捨て、ただの“西原みなみ”として、彼の不器用な人間らしさを支えようと手を伸ばす。
「志織は、あなたが自分に与えるための愛だったんじゃないの?」
「生きているだけで、偉いよ」
これまでその場限りの関係しか知らなかった孤独な少年が、真っ直ぐな言葉に救われ、初めて未来の約束を交わす。
夕暮れの空の下、二人が紡ぐ「また明日」の響きに、静かな涙と一筋の希望が込み上げる、痛切で優しい救済の物語。