あらすじ

港町に事務所を構える名探偵・明石露生は、警察すら一目置く冷静沈着な美貌の男である。彼の事務所には、派手な見た目の十九歳のギャルゲーマー・芹沢日向が居候している。静岡東部の訛りで遠慮なく口を挟む日向は、じつは裏の格闘興行で恐れられた元選手。明石が人の嘘を読み、日向が現場に落ちた小さな証拠を拾う。ちぐはぐな二人は、港町で起こる奇妙な殺人を解いていく。 秘密の恋人をメイドとして飼い殺しにした青年実業家。財産も愛も若い後継者へ移そうとした老歌舞伎俳優。希少なカードを餌に、同じ収集家の執着と身体を弄んだ御曹司。そして、記憶を失う前に死なせてほしいと十九歳の恋人へ願った病院院長。 四人の富める男が、それぞれ、愛と所有をめぐって死んでいく。ある者は愛した者の手で、ある者は、自らの手で。 独立して見えた事件の一つから、黒い封蝋のついた招待状が見つかる。差出人は、断崖に建つ異形の洋館「パノラマ邸」の主、不破漣三郎。老いた耽美派作家である不破は、殺された男たちを生前から知り、「愛に殺される顔をしていた」と明石へ告げる。 館には、不破が育て上げた絶世の美青年・蓮と、人間の肉を思わせる蝋人形が並んでいた。 明石は蝋人形殺人の謎を追いながら、蓮の肉体と沈黙に惹かれていく。蓮を永遠の芸術品として所有したい不破。蓮を救うと言いながら、自分のものにしたい明石。そして二人の男に望まれるほど、自ら美しい死へ近づいていく蓮。 日向だけが、三人の情念を一歩外から見つめていた。 「それ、愛じゃなくて呪いじゃん」 やがて館は炎に包まれ、蜜蝋と肉体と欲望が溶け合う。名探偵は謎を解けば人を救えるのか。それとも、すべてを見抜く眼こそが、もっとも深い地獄へ人を導くのか。 四つの愛殺事件から始まる、耽美猟奇ミステリー。

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カクヨム
カクヨム2026/06/18
  • 現在の作品男同士の愛と所有が、蝋人形・因習・失踪事件へ変わっていく耽美ホラー・ミステリー