あらすじ
巨大企業が支配する階層都市。
上層には企業幹部、富裕層、管理AI、清潔なビル群があり、下層には廃材市場、違法診療所、未登録義体、傭兵、闇商人、壊れた機械が集まっている。
主人公・九条晶人は、下層で小さな修理屋を営む青年。 義手、義眼、ドローン、旧式端末、医療ポッド、違法改造機器、壊れた生活家電まで、金さえ払えばだいたい直す。 本人の目的は小さい。 家賃を払いたい。 飯を食いたい。 店を潰されたくない。 修理代を踏み倒されたくない。 客に店先で死なれたくない。 それだけ。 だが、晶人にはひとつだけ厄介な能力がある。
相手が飲み込んだ本音が、本人の声で一瞬遅れて聞こえる。 嘘。 恐怖。 殺意。 助けてほしい気持ち。 踏み倒すつもり。 企業から受けた命令。 強く隠した言葉ほど、はっきり聞こえる。 晶人はその本音に合わせて、ただ先回りしているだけ。 だが周囲から見ると、彼は無口で不愛想なのに、嘘も裏切りも企業の工作もすべて見抜く危険な修理屋に見える。
「なぜ分かった」
「言っていないはずだ」
「あの男には隠し事が通じない」
そうして下層の闇医者、義手傭兵、裏社会の大物たちが、少しずつ晶人の店に集まっていく。
一方、巨大企業ノヴァ・グリッド社は下層を潰し、企業管理区画へ作り替えようとしていた。 だが、晶人はその計画の邪魔をしてしまう。 本人は下層を守るつもりなどない。
ただ、自分の店と客と修理代を守っただけ。 それなのに企業は、晶人をこう認定する。 下層の医療、傭兵、住民、旧インフラを裏から動かす都市最危険人物。 通称、下層の王と。