あらすじ
この世界には、“正しい名前”が存在しないものがある。
それは聖者と呼ばれ、死神と呼ばれ、歪みと呼ばれる。
だが、そのどれもが本質を言い当ててはいない。
ただ、人がそう“認識してしまった結果”が残されているだけだ。
世界は静かに狂っている。
正しさは存在せず、
間違いだけが、形を変えて積み重なっていく。
ある場所で、二つの存在が交差する。
理由も、意味も、完全には共有されないまま。
それでも刃は交わり、戦いは成立する。
それは戦争ではない。
偶然でもない。
まして、物語ですらない。
ただ、この世界がそう“定義してしまった現象”だった。
そして、その戦いは途中で止まる。
誰かの意思か、あるいは世界そのものの都合か。
その理由は語られない。
語られるのは、ただ一つ。
――「止まった」という事実だけ。
その瞬間から、世界はわずかに歪み始める。
信じていたはずの定義が揺らぎ、
与えられた意味が、音もなく崩れていく。
これは、英雄の物語ではない。
誰かが救われる話でもない。
名も持たない“現象”の中で、
それでも確かに何かが動き続けているという記録である。