あらすじ

緩和ケア専門医の桐島早苗は、ある晩夏の転院搬送で凍りついた。 患者の名前は「津田亮平」――12年前に別れた元恋人だった。 難病による激痛に蝕まれながら、亮平は静かに、しかし確かに言う。 「君の手で終わらせてほしい」 病院の屋上。深夜の処置室。二人だけの面談室。 繰り返される対話の中で、早苗の中の「医師」と「女」が引き裂かれていく。 法律は明快だ。倫理も、教科書には書いてある。でも亮平の顔が浮かぶと、すべてが机上の空論になる。 「あなたを医師として頼んでいるんじゃない。俺が一番みっともなかった時を知っている人間に、見届けてほしいんだ」 晩夏から真冬へ。季節が変わるたびに、亮平の身体は失われていく。 ある深夜、早苗は病室に入り、投与量をゆっくりと変えた。それは安楽死だったのか。 それとも、彼女なりの「繋ぎ止め」だったのか。 硝子の天秤は揺れたまま、答えを出さない。

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カクヨム
カクヨム2026/06/18
  • 現在の作品あなたの手で終わらせてほしい、と元恋人は言った。 緩和ケア医の私は、彼の願いに応えることができるのか―― 硝子の天秤:医師と患者、あるいは男と女