あらすじ
亡き父を嗤われても、笑って耐えた。
それがリーネの三年間だった。
侯爵家の嫡男との婚約の中で、紋章の届出書類を黙って整えてきた。
愛人の嘲笑も婚約者の無関心も、すべて飲み込んできた。
ある夜会で、婚約者が亡父を嗤った。
愛人が父の遺した勲章を偽物と笑った。
婚約者は、それを止めなかった。
リーネの中で、何かが静かに折れた。
暗い趣味と呼ばれ続けた紋章学の知識。
その知識だけが、父の勲章に刻まれた謎を解く鍵になる。
王家の記録室で調査を始めたリーネは、二つの真実に近づいていく。
父が生涯を懸けて隠した秘密。
そして、名門が百年守り続けてきた嘘。
嗤った者と嗤われた者。
本物は、どちらだったのか。