あらすじ
嵐の夜、人魚姫は海に落ちた王子を助けた。
けれど王子は、目を覚ましたときに浜辺にいた地上の姫を命の恩人だと思い込んでしまう。
人魚姫は真実を伝えたい一心で、海の魔女と契約する。
「人間の足が欲しいんです」
「代わりに、その美しい声をもらうよ」
「足だけください」
「悲劇を単品注文するな」
声を失い、人間の足を得た人魚姫。
歩くたびに鋭いナイフの上を歩くような痛みが走る。
それでも王子に会いに行く。
魔女は満足していた。
声を失った人魚姫は、もう想いを伝えられない。
悲劇は完成するはずだった。
しかし、人魚姫の横に白い文字が浮かぶ。
『字幕です』
声を奪われても字幕が出る。
字幕を奪われてもフリップが出る。
フリップを奪われても筆談がある。
筆談を奪われても旗信号がある。
人魚姫は健気だった。
そして、かなり図太かった。
『助けたのは私です』
『私はあなたを愛しています』
『これは恋愛です』
何度も伝える人魚姫。
しかし王子は、すべてを友情・尊敬・制度・自然への感謝として受け取ってしまう。
「作者の気持ち理解できない人間の成れの果てか!」