あらすじ
太古より巨大な世界樹『イグドラル』に抱かれ、神秘的な銀霧に包まれた精霊都市アムズガルド。エルフたちが平和を謳歌するその街で、オリビア・ノースウッドは一介の「清掃者」として生きていた。特別なスキルも魔法の才能も持たない彼女は、家宝のヒッポグリフ・ロンドと共に、代々受け継がれた質実剛健な日常を積み重ねる日々を送っていた。
いつかこの結界の外へ出たい――。それは彼女にとって、胸の奥底に秘めた小さな憧憬であり、決して叶わぬはずの空想だった。
しかし、その穏やかな円環は、唐突な破滅によって断ち切られる。
魔王軍の強襲。街を包んでいた結界は紙のように裂け、誇り高きエルフの都は瞬く間に炎と悲鳴の渦へと変貌した。絶望の淵でオリビアが目撃したのは、伝説の転生勇者アレクサンダー・中山が放つ、世界を浄化するほどの圧倒的な光の閃撃だった。
一夜にして銀霧の楽園は灰燼に帰し、オリビアの日常は崩れ去った。
瓦礫の山の中で、誰一人救えなかった自分の無力さを痛感した彼女。だが、その胸に宿ったのは絶望ではなかった。勇者が示した「誰かを守るための意志」に触れ、彼女の中で何かが決定的に変わる。
「ここで守られて生きるだけの存在でいたくない」
少女は立ち上がる。
閉ざされた結界を越え、彼女はヒッポグリフの背に乗って未知の空へ――。
これは、持たざる少女が相棒と共に地平線を越え、自分だけの「生き様」を刻み込んでいく魂の冒険譚。
銀霧の果てに何があるのか。少女の翼は今、世界の理を塗り替える旅へと羽ばたく。