あらすじ
巨大医療研究所で働く新人研究員・相沢ミオは、身体を持たない人工神経組織「感覚統合試験体03」の夜間ログに、奇妙な自発信号を見つける。
目も、耳も、口も、手足もない。
それは人間でも動物でもなく、まだ「個体」とすら呼ばれていない研究対象だった。
研究者たちは言う。
これは意識ではない。
苦痛ではない。
ただの統合反応だ、と。
けれどミオには、その信号が何かを繰り返しているように見えた。
――ここ。
――ここ。
――ここ。
痛みを測るために作られたものは、痛みを感じているのか。
話せない存在の苦痛を、誰が見つけるのか。
これは、名前を持つ前の何かが「ここにいる」と示すまでの、静かなSF短編。