あらすじ
名家・鷹司家の跡取りとして育った鷹司景は、感情より理性を優先し、何事も冷静に処理して生きてきた。
人を見る目には自信がある。
興味を失えば終わり。
執着することなど、ないはずだった。
箱根で芸妓「ユリ」として生きる女性・瑠璃に出会うまでは。
どこか現実感の薄い彼女は、人との距離感も、生きることへの執着も希薄だった。
まるで最初から、この世界に居場所などないように。
それでも景は目を離せない。
彼女の奥で静かに揺れる青い光が、
どうしても気になった。
誰にも理解されなくても構わない。
――あれは俺のサファイアだ。
だが瑠璃には、景を拒み続ける理由があった。
愛人の娘として生まれた過去。
名家に関わることへの恐れ。
そして、自分は誰かの幸せを壊してはいけないという諦め。
追いかける男と、
逃げ続ける女。
交わるはずのなかった二人は、
少しずつ互いの世界を変えていく。
二人の傍には、いつも一匹の不細工な猫・チャッピーがいる。
気まぐれに現れては、
人の心が揺れる瞬間を面白そうに眺めている不思議な存在だ。
これは、“たいせつ”を知らなかった男が、
たった一人の女性を愛し、
帰る場所を得るまでの物語。