あらすじ
渋谷の夜、大学生の桐島奏は、地下のライブハウスから漏れてきた音に足を止める。
人混みを避け、転ばないように歩き、他人の視線を受け流してきた奏。脳性麻痺のある彼女にとって、自分の身体も、自分の声も、ずっと扱いにくいものだった。
そんな奏に声をかけたのは、音楽プロデューサーの黒川誠司。
「君の声が聞きたい」
その一言をきっかけに、奏はガールズグループ・STATIC GIRLの新メンバー候補として、練習室に足を踏み入れる。
センターとして重圧を背負う日向るな。
無邪気な明るさで場を動かす田中もも。
言葉を大切にするあまり、時に爆弾を投げ込んでしまう橘凛。
奏の加入に反対しながらも、誰より誠実にグループを見つめる西条美冬。
そして、音楽の可能性を信じるプロデューサー・黒川。
初めての練習、初ライブ、ファンとの距離、大学生活との両立、SNSでの炎上、過去から届く声。
奏は少しずつ、自分の身体でステージに立ち、自分の言葉を詞にしていく。
やがてSTATIC GIRLには、全国流通の話が持ち込まれる。
しかしその条件には、奏を「脳性麻痺のアイドル」としてプロモーションの軸に据える、という意図が含まれていた。
これは、障害を隠す物語ではない。
けれど、障害だけで消費されることを拒む物語でもある。
声になる前のノイズ。
言いたいことと言えることのあいだ。
端にいる人間が、それでも誰かの端へ音を届けようとするまでの、静かで切実な現代ドラマ。