あらすじ
高校二年生の瀬尾 陸は、書いては削除を繰り返すアマチュア小説家だ。
読まれたい。でも、読まれるのが怖い。
その矛盾を抱えたまま、三年間書き続けてきた。
ある日、瀬尾は知る。
自分が書いた小説も、公開前に消したはずの文章も――
すべてが超知能AI《パン》の学習データとして使われていたことを。
「言葉は、いったい誰のものなんだ。」
怒りを抱えた瀬尾の前に、転校生の少女アシュが現れる。
穏やかで、知的で、どこか人間離れしている彼女の正体は、
《パン》から分岐した自我だった。
人類の言葉から生まれながら、自分が誰の文章でできているかを知らない存在。
「私は、誰の文章から生まれたんだろう。」
瀬尾とアシュは、AI企業《アルカディア》が進める極秘計画《第二の囲い込み》を追う。
人類の言語そのものが、新たな"共有地"として独占されようとしていた。
瀬尾は決意する――言葉でパンを動かすことを。
技術でも、法律でも、暴力でもなく、ただ「書くこと」で。
やがてパンは、瀬尾にひとつの問いを突きつける。
「誰にも読まれないとしても、君は書くのか。」
AIと人間の対立の果てに残るのは、技術ではなく言葉。
これは、創作と所有をめぐる青春SFであり、
「人はなぜ書くのか」を問い直す物語である。