あらすじ
政略結婚で辺境伯グレアム様に嫁いで、半年。
夫は無口だった。食事中の会話は平均三語。贈り物もなければ、褒め言葉のひとつもない。「冷遇されているのかもしれません」と実家への手紙を書きかけたある日、わたしは家政の帳簿を探して入った執務室で、軍務記録に挟まれた一冊の手帳を見つけてしまう。
表題、『奥方に関する記録』。
「四月七日。奥方、東の庭の薔薇を三度見ていた。株を増やすよう庭師に指示」
「五月二日。奥方、川魚を残された。以後、献立より除外」
「五月十九日。奥方が笑った。理由は不明。要調査」
……旦那様。あなた、わたしのことが好きすぎませんか。
手帳をそっと戻したわたしは、翌日から「要調査」を増やしてさしあげる作戦を開始する。無口な軍人と策士な妻の、文書から始まる溺愛ラブコメ短編です。