あらすじ
坂入ひなたは、真田晴久に守られながら生きている。
夜ごと酒の匂いをまとって戻る母に怯えながら、ひなたは家の中で晴久だけを頼りに日々を過ごしていた。
晴久は、そんなひなたを誰よりも大切にしている。朝は彼女を起こし、髪を整え、食べさせ、勉強を見て、傷つかないように守る。幼なじみで、家族のようで、恋人のようで、そのどれでも足りない関係。二人は互いに寄り添い、溶け合うようにして閉じた日常を保っていた。
けれど高校三年の夏、尾崎知佳という少女が二人の世界へ入り込む。ひなたにとって初めての友達。晴久にとっては、かつて捨てた水泳の世界を思い出させる存在。知佳との出会いをきっかけに、ひなたは少しずつ外の世界へ目を向け始める。
自分も変わりたい。晴久の隣に、守られるだけではなく、対等な人間として立ちたい。
しかし、近づくほどに晴久が自分のために捨ててきたものが見えてしまう。愛されるほど、ひなたは自分が晴久から奪っているのではないかと苦しみ始める。
そして夏休み直前。知佳の告白をきっかけに、ひなたは晴久へ問いかける。
もし過去の傷がなかったら。
もし自分が、守られるだけの女の子ではなかったら。
それでも晴久は、自分を選んでくれただろうか。
答えを持たないまま、晴久はひなたへ指輪を差し出す。
奪うのではなく、捧げるのでもなく、これからは二人で分け合えばいい。
そう信じて、二人は初めて、未来を約束する。
これは、壊れた家の中で寄り添ってきた少年と少女が、互いを救おうとして、愛のかたちを見つけようとする物語。
二人だから、分かたれる。ならば、どうすれば離れずにいられる?
※ 公募用の原稿なので完結済みです。過去にあげていた作品の全面改稿になります。