あらすじ
人の才能を見抜く目を持ちながら、その目を「節穴」と呼ばれ続けた。
リーネの目は、人の中に眠る才の輪郭を視る。
村の農夫に数の才を、商家の娘に交渉の才を見出し、三年かけて領地を支える家臣団を育て上げた。
けれど婚約者にとって、それは恥でしかなかった。
「使用人に好かれるだけの婚約者など要らない」。
彼はリーネの留守中に、家臣を一人残らず解雇した。
床に散らばった人材記録を、一枚ずつ拾い集める。
怒鳴ることも泣き崩れることもせず、一晩かけて完璧な引き継ぎ帳簿を書き上げた。
そして静かに、屋敷を去った。
捨てられた人材たちは、やがて別の場所で光を放ち始める。
その光に、国の中枢を預かる冷徹な宰相が気づいた。
「この分析を書いた人物を連れてこい」と。
一方、人材を失った領地では帳簿が合わなくなっていく。
報告は届かず、商会は離れ、味方は一人ずつ減っていく。
すべてが、自らの判断の結果だとも知らずに。
「節穴」と呼ばれた目が見出した光は、今どこで灯っているのか。
十二の椅子が並んだままの空の部屋は、まだそれを知らない。