あらすじ

人の才能を見抜く目を持ちながら、その目を「節穴」と呼ばれ続けた。 リーネの目は、人の中に眠る才の輪郭を視る。 村の農夫に数の才を、商家の娘に交渉の才を見出し、三年かけて領地を支える家臣団を育て上げた。 けれど婚約者にとって、それは恥でしかなかった。 「使用人に好かれるだけの婚約者など要らない」。 彼はリーネの留守中に、家臣を一人残らず解雇した。 床に散らばった人材記録を、一枚ずつ拾い集める。 怒鳴ることも泣き崩れることもせず、一晩かけて完璧な引き継ぎ帳簿を書き上げた。 そして静かに、屋敷を去った。 捨てられた人材たちは、やがて別の場所で光を放ち始める。 その光に、国の中枢を預かる冷徹な宰相が気づいた。 「この分析を書いた人物を連れてこい」と。 一方、人材を失った領地では帳簿が合わなくなっていく。 報告は届かず、商会は離れ、味方は一人ずつ減っていく。 すべてが、自らの判断の結果だとも知らずに。 「節穴」と呼ばれた目が見出した光は、今どこで灯っているのか。 十二の椅子が並んだままの空の部屋は、まだそれを知らない。

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小説を読もう2026/06/17
  • 現在の作品私が見出した人材を全員捨てた婚約者が、空の執務室で一人きりになるまで