あらすじ

この世界に、人間性はない。 人々は他者の苦しみに無関心となり、死や暴力さえ手段の一つ。たとえ道端に人の頭が転がり落ちていたとしても、それを異常だとは微塵と思わない。数多くの非道な行いによって、社会は維持されていた。 そんな世界で生きる青年マティアスは、かつて最愛の女性リディアを失った。彼女を奪ったのは、人類へ失われた感情を取り戻そうとする研究計画──プロジェクト・ルーメン。人間の感情を「光」として観測し、人類へ共鳴させることで世界を変えようとするその研究は、多くの犠牲の上に成り立っていた。 彼女の死の真実がわかるかもしれない、そう思ったマティアスは研究所へ潜入する。狂気の研究、先があるかもわからない。しかしそこで出会った研究者たちは、決して狂人ではなかった。 犠牲に心を痛め、涙を流し目を腫らす研究員。耐えきれない罪悪感を薬で誤魔化す研究員。犠牲を背負いながら未来を信じる責任者。彼らもまた、この壊れた世界を救おうとしていた。 研究が進むにつれ、実際に人の心は少しずつ変わり始める。 本当に悪なのは誰なのか。人間性とは何なのか。犠牲のない救済は存在するのか。 やがて研究は暴走し、抑圧されていた感情が世界へ溢れ出す。 世界が人間らしさを取り戻していく中で、ただ一人、マティアスだけが自らの罪と向き合うことになる。 これは、冷たい月のような光に照らされた世界で、人間であることの意味を問い続ける物語。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/06/17
  • 現在の作品Étranger de la Lune〜月の異邦人〜