あらすじ

四年前、千春は迷い込んだ異界の山で「送り犬」に出会った。 送り犬は、山道で後ろをついてくる黒い犬の怪異だ。転んではいけない、立ち止まってはいけない、振り返ってはいけない──その決まりを守れば、人里まで送ってくれる。 千はたくさん。 春は春。 帰り道でそう自分の名前を送り犬に教えた千春は、転んでしまっても無事に返してもらうことができた。 その日のことを、千春は忘れたことがない。 もう二度と会えないはずだった。 それなのに、山裾で千春が「もう一度会いたい」と願ったとき、彼女は再び異界の山へと迷い込む。 四年前と同じ送り犬がそこにいた。 「おまえ、千春か」 千春の名前を覚えたままで。 山の神が許した七度の来山のなかで、千春は決断を迫られる。 人の世へ帰れば、送り犬とは二度と会えない。 けれど山に残れば、千春は二度と人の世に帰れない。 帰すべきだと知っているのに、帰したくない犬。 帰らなければならないのに、もう離れたくない娘。 これは、名を覚えた怪異と、忘れられなかった娘の恋の話。

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小説を読もう2026/06/17
  • 現在の作品送り犬は覚えている