あらすじ
父の十三回忌を終えた夜、主人公は母が「沼田レン」という謎の配信者に夢中になっていることを知る。画面に映るのは黒い沼だけ。姿の見えない配信者は、視聴者に「沈めたいもの」を尋ね、母は毎晩「夫に会いたい」と書き込むようになる。
やがて母は少しずつ現実感を失い、ついに「レンくんのところへ行く」と言い出す。配信の位置情報が示していたのは、十二年前に父が行方不明になった蓮沼町だった。母を追った主人公は、森の奥にある不気味な沼で、父の声に誘われて水へ入ろうとする母を見つける。
沼は主人公にも、寂しさや怒りを沈めれば楽になれると囁く。しかし主人公は、悲しみを消すのではなく、母と共に抱えて生きることを選ぶ。父の幻影は消え、母娘は沼から帰還する。だが母のスマホには、沼田レンからの最後の通知が残されていた。