あらすじ
「喪が明けるまでの三十日だけ、俺の妻になってくれ。本物の妻は、いらん」
死んだ人間の家から、隠された嘘を掘り出す女・ノエル。辺境の領主が持ちかけたのは、奇妙な偽りの結婚だった。
喪が明ける日、家督の審問が開かれる。それまでに暴いてほしい――この屋敷で、ひと月前に死んだ前当主の、死の真相を。
当主の椅子に座れない男。誰も信じず、息をひそめて暮らす九つの遺児。そして、止まったままの、ひとつの時計。
――あれは、本当に事故だったのか。
血の繋がりも、家柄もない。期限つきの、借り物の家族。
なのに、暴くために雇われたはずの女は、いつのまにか、手放したくないものを、数えはじめていた。