あらすじ
私が死んで三日目の夜。
私は母の夢に出た。
お願いだから、お寺へ行って、私のために一度だけ供養をしてほしい。
卒塔婆を一本、立ててくれるだけでいい。
線香を一本あげてくれるだけでもいい。
花を一束、供えてくれるだけでもいい。
いちばん安い卒塔婆でいいから。
けれど、夢から覚めた母は、インスタグラムに一枚の写真を投稿した。
「娘がいなくなって三日。ようやく家が静かになった。生きている時から、いつも暗い顔をしていて、まるで世界中が自分に借りでもあるみたいだった。死んでくれて、少し楽になった」
添えられていたのは、母が新しくしたばかりのピンクのネイルだった。
爪先には細かなラメが散っていて、日差しの中できらきら光っていた。
その投稿を見た瞬間、私は悟った。
母は、私を供養してくれない。
けれど母は知らない。
三か月後。
大規模感染が日本中をのみ込むことを。
私が供養を求めたのは、冥府で楽をしたかったからではない。
守護獣契約を買い、現世へ戻り、あの人たちを守りたかったからだ。