あらすじ
100歳の誕生日を迎え、穏やかに生涯を終えた男。
恋愛経験はなく、生涯童貞。
死後に出会った女神から、その経歴を事細かに読み上げられた彼は、ついに最高位の称号を授けられる。
――神域の魔導士。
しかし、女神が彼を選んだ本当の理由は、童貞だったからではない。
100年を生きてもなお、人の命を軽んじなかった魂。
それこそが、神域の魔法を扱うために必要な資質だった。
女神に請われ、18歳の肉体を持つ青年ヴァージルとして異世界へ転生した彼が目にしたのは、人々が自らの命を燃やして奇跡を起こす世界だった。
傷を癒やせば、寿命が縮む。
大きな力を使えば、身体が石や結晶へ変わる。
それでも人々は、命を神へ捧げることを誉れと信じていた。
疫病に苦しむ村でヴァージルが出会ったのは、自らの命を削り、左腕を白い結晶へ変えながら人々を治療する少女神官エステル。
「その術を、これ以上使ってはいけない」
「命を捧げることこそ、神官の誉れです」
「その誉れのために、君が死ぬ必要はない」
この世界では失われた、自然界の魔力を用いる本来の魔法。
ヴァージルが命をひとつも犠牲にせず病人を救ったとき、神々によって作られた世界の常識が揺らぎ始める。
なぜ、人は命を捧げなければ奇跡を起こせないのか。
捧げられた命は、いったいどこへ消えているのか。
これは、100年を生きた童貞が、命を喰らう神々を討ち、奪われた魔法と人間の未来を取り戻す物語。