あらすじ
小百合、四十二歳。
夫と高校生の娘とともに穏やかな家庭を築いている彼女には、決して誰にも言えない秘密があった。
十七年前の夏、恋人の真一が不慮の事故で命を落としたこと。その深い傷を隠したまま、心を殺して生きてきたこと。
ある日、家族旅行で訪れた「月待の滝」で、彼女は一人の少年・英樹(十五歳)と出会う。初対面のはずの彼がふと見せたのは、かつて真一と二人だけで交わした「秘密の合図」だった。
「滝の裏、まだ入れるんですよね」「ここ、寒かったよな」――真一しか知らないはずの記憶を語り、真一と同じ匂いを纏う英樹。彼の中に死んだ恋人がいると確信した時、小百合の十七年間の平穏な現実は音を立てて崩れ始める。
十五歳の少年と、四十二歳の主婦。
決して交わってはいけない二人が、理屈を超えた魂の引力で惹かれ合う。
これは、月を待つだけだった一人の女性が、残酷で切ない運命に直面し、再び自分の人生を歩み出すまでの物語。