あらすじ
リューデンの王立染織工房を預かる伯爵令嬢ロザリンは、ある夜、王太子から突然の婚約解消を告げられる。けれど彼女が見ていたのは、隣に寄り添う令嬢のドレスの裾――王家にのみ許された紫が、安手の染め重ねで似せられた“偽りの紫”だと、ひと目で見抜いてしまう。
時を同じくして、王都には精巧な偽の高級織物があふれ、真っ当な職人たちが静かに沈みはじめていた。
王の調査官セドリックと手を組んだロザリンは、色と光と手仕事の知識を武器に、偽物の出どころを少しずつ辿っていく。
観察し、仮説を立て、確かめ、証を示す――その一歩ごとに、敵の影は宮廷の奥へと伸びていく。
婚約破棄、結構。その前に、偽りの色をまとった者たちを、ひとつ残らず明るみに出しましょう――。
褪せない紫が、すべての嘘を照らし出す。静かな逆転の物語が、いま幕を開ける。