あらすじ
長州藩邸に出入りする藩医の娘・一ノ瀬紫は、桂小五郎、高杉晋作、久坂玄瑞、入江九一、そして吉田稔磨らに大切に囲われて育ってきた。
けれど、血の痕を隠して何事もないように笑う彼らの姿を見た夜から、紫の胸にはひとつの願いが生まれる。
――守られているだけではいたくない。
剣術を学びたいと願うも、誰ひとり首を縦には振らない。
それでも諦めきれなかった紫は、偶然出会った寡黙な剣士に密かに教えを乞う。
朝ごとの秘密の稽古の中で、紫は少しずつ自分の足で立つ強さを知っていくが、その隠し事はやがて稔磨に知られてしまう。
怒り、嫉妬、独占欲。
静かな男の胸に秘められていた想いは、深い口づけとともに溢れ出す。
一方で紫もまた、自分がただ懐いているだけではなく、稔磨の傍にいたいと願っているのだと気づいていく。
危うい時代の中で、それでも守られているだけでは終わらず、自分の意志で隣を選ぶ。
これは、無垢な娘が初めて恋と強さを知り、静かに熱い愛へたどり着くまでの物語。