あらすじ

大好きだったパンも、ラーメンも、ケーキも、ある日突然、食べられなくなった。

二十八歳の花巻こむぎは、小麦アレルギーをきっかけに、人生そのものを失ったような気持ちで、古いアパートの一室に沈み込んでいた。母がパン屋だったことも、自分の名前に「こむぎ」とつけられたことも、すべてが皮肉に思えてしまう。

そんなある日、壁の向こうから響いたのは、謎の一喝。

「お黙りなさい、ひよこ豆」

現れたのは、ティアラにロイヤルブルーのドレスをまとった隣人、米田クイーン。自称、グルテンフリー界を統べる女王。大げさで、変で、けれどお菓子作りの知識だけは異様に本物の彼女は、絶望していたこむぎを半ば強引にキッチンへ連れ出す。

最初に作るのは、レンジでできる米粉のマグカップケーキ。次は、ほろほろ崩れるスノーボールクッキー。ふわもちパンケーキ、濃厚ガトーショコラ、シフォンケーキ、ロールケーキ、バスクチーズケーキ——。

失敗して粉糖を爆発させても、パンケーキを天井に貼りつけても、女王は笑って言う。

「失敗ではありませんわ。これは、別の美しさです」

米粉には米粉の理屈がある。小麦を失ったからこそ、見つかる味がある。こむぎは少しずつ、食べる喜びだけでなく、自分の手で人生を作り直す力を取り戻していく。

けれど、米田クイーンは何者なのか。なぜ貧しいアパートに、ピアノと哲学書とプロ級の製菓知識を抱えて暮らしているのか。そして、こむぎが胸に秘める田中部長への恋は、米粉のガトーショコラとともに届くのか。

これは、小麦を失った女性が、隣の女王様と米粉スイーツに導かれ、喪失を希望に焼き直していく、笑えて泣けるグルテンフリー再生物語。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
アルファポリス
アルファポリス2026/06/15
  • 現在の作品小麦アレルギーで絶望してたら、隣の女王様に「ひよこ豆!」と叱咤され、米粉スイーツで人生逆転します