あらすじ
解体前の現況調査のため、古い団地「中町ハイツ」を訪れた水野晴人。三〇四号室は、図面どおりの小さな空き部屋に見えた。だが、押し入れの奥から見つかった古い菓子缶には、白い折り鶴と「番号のない部屋を開けるな」と書かれた紙片が残されていた。
やがて晴人の持つ図面に、存在しない扉が浮かび上がる。壁の向こうにあるはずのないその扉には、赤いクレヨンで「0」と書かれていた。扉の奥から聞こえてきたのは、紙を折る音。そして、十年前に火事で死んだはずの妹・結衣の声だった。
開かれるはずのなかった部屋が、晴人の封じた記憶を呼び覚ましていく。そこにあるのは過去か、幻か、それとも誰かが閉じ込めた後悔なのか。
図面にない扉の向こうで、晴人はまだ思い出していない真実と向き合うことになる。