あらすじ
四年ぶりに町へ戻ってきた優希は、雨の日、昔からある喫茶店にふと立ち寄る。
休日なのに家にいると息が詰まる。
誰かと話したいわけではない。
でも、誰もいない部屋にまっすぐ帰るのも、少し違う。
そんな日に座った窓際の席で、優希は一冊の無地のノートを見つける。
そこには、名前も日付もない言葉が残されていた。
『ここに書くと、
少しだけ、楽になります。』
誰にも説明しなくていいこと。
終わったはずなのに、ときどき顔を出すこと。
大人になってから、うまく言葉にできなくなったこと。
優希は迷いながら、自分の言葉を一つだけ書き残す。
署名は、ただ一文字。
『ゆ』
やがて、そのノートには別の誰かからの返事が増えていく。
『k』
顔も知らない相手との静かなやりとり。
少しずつ近づいていく言葉。
そして喫茶店の入口で、優希は四年前の恩師・佐藤海斗と再会する。
大きな事件は起きない。
劇的な告白もない。
ただ、雨の日の喫茶店で、
言えなかった言葉が少しずつ置かれていく。
四十代、五十代の大人にも読んでほしい、
コーヒーの苦味のように静かな再会の恋物語。