あらすじ
感情を持たないことを自分に課してきた陰陽師の高校生・阿部晴彦は、幼い頃に「情に流されて祓えなかった」経験から、感情を切り捨てて生きてきた。
ある夕暮れ、商店街に潜むあやかしを祓いに行った晴彦を待っていたのは、裸足に着物、藍色の目をした不思議な少女・紺だった。
「祓ってくれる? でも、ちゃんと恋をしてから」
あやかしである紺は、恋を体験すると消える存在なのだという。
そして晴彦に告げた。
──消えるために恋を教えてほしいと。
陰陽師上層部からの命令は「感情誘導任務」。紺に恋をさせて、そして、祓え。
かくして始まったのは、矛盾だらけの同居生活。たこ焼きに目を丸くし、カフェラテに「あたたかい」とつぶやき、夕日を見て「さみしい」という感情を知る紺。そんな紺に、感情を閉ざしていたはずの晴彦も、少しずつほぐされていった。
おいしい。きれい。楽しい。さみしい。
紺が初めて知る感情のひとつひとつが、晴彦にとっても、感情を取り戻すものとなった。
やがて晴彦は自分の本心に気づいてしまう。
――紺を祓いたくない。
感情を出したら負けだと思っていた少年は、今や祓うべき対象に深い感情を抱いてしまっていた。
終わらない恋が、ゆっくりと、始まる。