あらすじ
「ひと冬を、誰も死なせずに越させられたら――妻と認める」
家柄も持参金もない私が、辺境伯に求められた理由はそれだけだった。
毎年、冬に人が死ぬ領地。荒れた帳簿。痩せて、何も食べなくなった幼い継子。そして、軽口ばかりで本心を見せない夫。
でも、構わない。私は各地を渡り歩いて、生きる術を拾ってきた。帳簿の不正を暴き、商会の妨害を伝手で迂回し、港町仕込みの保存術で蓄えを作る。――どこへ行っても食べていけるように、と母が遺してくれた、そのすべてで。
ただ一つ、誤算があった。
この冬を越えるころには、私自身が、もうこの家を、離れたくなくなっていたこと。
※ざまぁはありません。静かに、確かに、家族になっていく物語です。