あらすじ
どの国の時刻表にも載らない夜行急行〈ノクターン〉。
この列車に乗るのは、降りる駅を見失った人だけだ。
売り子のリゼットは今夜もワゴンを押して通路を行く。珈琲にショコラ、焼きたてのビスケット。
そしてもうひとつ——ワゴンの二段目には、積んだ覚えのない品が紛れ込んでいる。
雨に濡れた手紙、亡き人の焼き菓子、止まったままの懐中時計の鍵。
その品が客の記憶に触れたとき、霧の中に小さな駅が現れる。
客は降りていく。答えを手にして。
売り子は見送る。自分の答えだけが、まだ見つからないまま。
朝の来ない列車で、今夜も売り声が響く。