あらすじ

三十五歳の瀬川奈緒は、ある夜、帰宅してアクセサリーを外していた。 ピアス、指輪、ネックレス。 いつものように小さなトレーへ置こうとした指先が、淡い青緑色のビーチグラスに触れる。 それは昔、藤崎航と海辺のレストラン Paper Moon で食事をした帰り道、彼から手渡されたものだった。 「宝石じゃないけど、綺麗ですよね」 その時は、何気ない一言だった。 けれど奈緒は、その小さな海のかけらを、何年も捨てられずにいた。 嫌いになったわけでも、喧嘩したわけでもない。 ただ、仕事、生活、タイミング、距離の中で、ふたりは少しずつ離れていった。 最後のメッセージが、最後だと気づかないまま終わることがある。 大事だったものが、音もなく手から離れていくことがある。 これは、終わった恋に戻る話ではなく、 捨てなくていい記憶に気づく夜の物語。

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カクヨム
カクヨム2026/06/15
  • 現在の作品海辺のレストラン Paper Moon 短編シリーズ 第3話 トレーの中の海