あらすじ

「君の代わりはいくらでもいるんだよ、リリア」 王宮文書局で働くリリアは、婚約者であり上司でもあるアルフォンスにそう言われた。 彼は知らない。 リリアが確認した書類ひとつで、北方砦の兵士たちに毛布が届いたことを。 彼女が通した申請ひとつで、孤児院の子どもたちが冬を越せたことを。 王宮の仕事が滞らないよう、誰にも見えない場所で支えていたのがリリアだったことを。 けれど、彼が言うのなら仕方ない。 代わりはいくらでもいるらしい。 ならば本当に、代わりを用意してから辞めよう。 リリアは半年かけて、新人文官、写本係、倉庫係、侍女、警備兵、使い走りの少年にまで仕事を教えた。 書類の読み方を。 数字の嘘を。 仕事の向こうに、人の暮らしがあることを。 そして百人を超える人材を育て上げた日、リリアは辞表と婚約解消の申立書を提出する。 「わたくしの代わりは用意いたしました。ですので、わたくしは辞めます」 これは、自分を軽んじた婚約者に何も期待しなくなった有能文官が、静かに職場を去り、残された者たちが彼女の価値を思い知る話。

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小説を読もう2026/06/15
  • 現在の作品お前の代わりはいくらでもいる、と言われたので、代わりを百人育てて辞めました