あらすじ
高校時代、プロ入りを嘱望される天才エースでありながら、仲間が起こした不祥事により、一度も甲子園の土を踏めぬまま唐突に野球人生を断たれた男。
それから数年。彼は過去の挫折から逃げるように高校の教員となり、部員わずか九人という弱小野球部の顧問を引き受けていた。
貪欲に勝利を目指す世界とは無縁の場所で、泥にまみれて白球を追う少年たちを静かに見守る日々。しかし、地方大会の初戦を控え、チームに不測の事態が起こる。
理不尽な現実に、かつての暗い記憶を呼び起こされた男は、激しい懊悩のなかで校舎裏の古びた用具倉庫で一人悩む。
埃っぽい木箱の底から、自分が高校時代に封じ込めたはずの、ボロボロのグローブを見つけた瞬間――