あらすじ
私はタイムマシンを持っている。
実際に何度も起動したことがある。何度もやり直せて、ヒーローにもヒロインにもなれた。
私はタイムマシンを持っている。
世界中で愛されて、幸せになる。
なりたいものにすぐなれて、嫌なことは忘れられて、すべてをリセットできる。
そんな夢みたいな機械を、私は持っていた。
私はタイムマシンを壊した。
夢を見続けるのは簡単だった。
けれど、どうやらそれも限界があるらしい。
何度も戻り続けると、うまく帰れなくなる。
夢の中に閉じこもりたかった。
でも、その勇気すらなくて。
だから私はタイムマシンを壊した。
壊してしまったんだ。
愛されたかった。
幸せになりたかった。
何かを成せる人に。
誰かに愛される人に。
そんな妄想を抱いて、タイムマシンを動かし続けて、考え続けて。
そして気づいた。
もうタイムマシンは壊れてしまったんだ、と。
もう私は、こっちを見なきゃいけないんだね。
現実はちっぽけだ。
妄想の中みたいに壮大なことなんて成せない。
辛いことばかりだ。
でも――
好きな人ができた。
タイムマシン。
私はやり直したいよ。
好きな人に嘘をついてしまった、あの日に。
戻りたい。
戻って、やり直したい。
でも。
もし本当にやり直したら、きっと君は私を好きになってくれなかった。
だから私は、タイムマシンを捨てなきゃいけない。
壊さなきゃいけない。
愛されてしまったから。
その嘘を含めた私を。
たったひとつだけの嘘が心残りで、
今にも泣き出しそうで、
それでも言えないまま、
私は永遠みたいな時間を、君の隣で生きていく。
愛してる、と言い続けながら。
私がついた嘘を打ち明けられる日なんて、
主人公が現れたって、きっと来ない。
無理なことなんだ。
君にも、その嘘が何なのか教えられない。
だって――
タイムマシンは、もう壊れてしまったんだから。