あらすじ

「言葉は、誰かに伝わる形になったものです。声は、その前にある」 動画編集者の水野は、SNSで支持を集める野党議員・峰岸修司の事務所に雇われる。 峰岸は、専門家や当事者の声を集め、国会で政府へ鋭い問いを突き付ける政治家だった。 だが、国会で語られる言葉は、誰かの声をそのまま届けたものではない。 研究者が整理し、政策スタッフが削り、峰岸が選び、水野が短い動画へ切り取る。 そのたびに言葉は届きやすくなり、同時に、そこから何かが失われていく。 峰岸の事務所には、桐谷慎一の言葉が掲げられていた。 「人は、自分の言葉でしか、責任を負えない」 峰岸は、桐谷について語ろうとしない。 一方、故郷の父は、わが子が編集した政治動画を通して、政治や社会について自分なりに考えるようになる。 届いた言葉は、別の意味へ変わっていた。 失われた空洞に、自分の言葉が加わることで。 父が倒れた日、水野のもとへ峰岸から二百を超える記録が届く。 質問原稿、削除された注釈、音声、映像。 最初のファイル名は、 桐谷慎一について。 そして峰岸は姿を消した。 言葉になる前の声は、誰のものだったのか。 誰かへ届く形に変えた時、その責任は誰が負うのか。 政治がSNSへ適応し始めた時代に、声が言葉へ変わる瞬間を描く物語。 【登場人物】 水野 政治動画の編集者。国会中継を短く切り取り、政治家の言葉を多くの人へ届ける一方、自分が何を伝え、何を削っているのか分からなくなっていく。 峰岸修司 SNSで絶大な支持を集める野党議員。専門家や当事者の声を集め、国会で政府へ鋭く問いかける。 桐谷慎一 峰岸のかつての友人であり、政策スタッフ。確かめられないことを断言せず、当事者の声を安易に一般化しない人物。 奈緒 制度被害を訴える当事者で、かつて峰岸、桐谷とともに制度改革へ関わった。二人の過去を知る重要人物。 小川 峰岸事務所の事務局長。峰岸と桐谷の過去を一部知る。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/06/14
  • 現在の作品こえ